博士のたまごのブログ

横浜国立大学の博士課程に進学することに決めた大学院生の日記

なぜ運動方程式はF=maではなくma=Fなのか ~見えないものに立ち向かう姿勢~

高校2年生の時,友達のK君が言いました.

「F=maってma=Fじゃないといけないらしい」

物理学を習いたてだった僕は,「同じじゃん,どうでもいい」としか思いませんでした.なんならその友達にもそう言ったかもしれません.K君ごめん.

同じじゃんと思いつつもなぜなんだろうという心の引っかかりはずっとあって,理由が分かったのが大学に入ってからでした.

実はこの順番には,物理学あるいは自然科学の,現象に対する姿勢が表れています.

自然科学とはなんなのか.どこまで信用できる学問なのか.

最近,「ウィーアー フラットアーサー!」でおなじみの地球平坦論者が増えているらしいというのもあり,自然科学の姿勢をお話しして少しでも科学に対する疑念が晴れたらいなと思い,この記事を書くことにしました.

 

目次

 

なぜma=Fなのか

結論から言うと,この式は数学的なイコールの式ではなく,物理的な意味が入りこんでいるからです.「物理的な意味」とは,ずばり因果関係です.ma=Fでは,左辺が結果,右辺が原因という順番になっています.すなわち,ma=Fという式は,「Fという力が原因となってmaという結果が生じる」という意味を持っているんです.

なぜ左辺が原因ではないのか?感覚的に言えば左辺が原因の方がしっくりきますよね.僕もそう思いました.しかし,そこには物理的に豊かな意味があったんです.

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ma=Fは因果関係を表し,イコールの意味とは違う


 

自然科学の成り立ち

法則の発見から原理を追う

自然科学は物理学,化学,天文学,生物学など,現象の法則性を調べるような学問のことです.

身の回りを見てみるといろんな現象があります.夜空を見上げれば星があります.ボールを投げれば必ず下に落ちてきます.金属に触れるとバチっと音がなることがあります.

人間は何度もこう言った現象を感じると法則性に気づきます.

星は決まった形で現れ,季節で変わる.よく見ると一つだけ動かない星がある.ボールの落ちる位置は力の入れ具合でコントロールできる.冬場乾燥しているときにはバチっとなりやすい.などなど.

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人は経験から法則性を感じ取り,その理由を探す

なぜこのような法則性があるのだろう?これを探り,元の原因(原理・原則)を見つけるのが自然科学です.

自然科学は,「経験したこと」がベースになっており,突然偉い人がひらめきで原理原則を主張し始めたという怪しいものではないのです.

「そう考えざるをえない」慎重で謙虚な推測

自然科学は「経験科学」とも呼ばれ,「経験した,あるいは観測した事実だけ」から,その根底にひそむ原理・原則・原因を「推測」します.原理さえわかれば他の現象にもその原理をあてはめてみます.それがうまくいけば推測は正しかったんだね.となります.

 

誤解を恐れずに言えば,あくまで推測なんです.

 

しかし,その検証はかなり慎重に行っています.ほかの現象を説明できない場合,その推測はばっさりと捨てられるか修正されます.あくまで経験事実と合うことが大切なのです.あらゆる角度から検証して,正しいと考えざるをえないという原理の積み重ねが自然科学なのです.実はものすごく慎重で謙虚な学問なんですよ!

 

 見えないものに立ち向かう姿勢

 観測事実(経験)を第一に

目に見えないものって分からないし恐ろしいんです.そんな時に大切になるのが,「何が観測できるのか?」です.ma=Fで観測・測定ができるのは質量mと加速度aですよね.Fって目に見えないし正体は分からないんです.我々は結果を観察して,原因を探ることしかできないんです.力が働いた結果モノが動くと考え,その結果である加速度を測るのです.「経験的に」ものが重くなると動きづらくなるのを知っているので質量をかけるんです.だから観測結果としてmaが先に来るんですね.

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観測可能なものから観測不可能なものを予測する.

 

 「臆病な科学」見えないものは推測で対応

maを測定すると,そこから目に見えないお化け「F」が推定されるわけです.Fの関数の形が分かってくると力の正体も見えてきます.臆病な科学は,わからないものを事実から推測して分かるものへと変えていくのです.

例えば,重力を考えると,Fは距離の2乗に反比例します.ここから推定できるのは,重力は等方的(球体的)に伝わる力だということです.

電気力線のようなものを考えると距離が延びるにしたがって力線の密度は球の表面積面積4πr2に反比例しますよね.この等方的な引力が球体状に働くので地球は丸くなると推測できます.実際に宇宙からの写真見ると丸いですよね.ほら,怖くなくなった.

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(a)3次元        (b)2次元 
二次元で見る中心から遠ざかるほど線の密度は小さくなっていますね.同じことが3次元でも言えて,3次元の場合,線密度は表面積に反比例します.地球は丸いんですよ.

 

最後に

さて,ma=Fの順番を皮切りに自然科学の姿勢をお話しさせていただきました.自然科学の専門家ではないのですが,書き始めたら熱が入ってしまった...

大学に入って科学の極めて謙虚な姿勢に気づいたとき,ものすごく感動したのを覚えています.この感動が少しでも伝わっていたら最高です.