博士のたまごのブログ

横浜国立大学の博士課程に進学することに決めた大学院生の日記

思考実験を実験してみた!~ラウールの法則~

今回は化学の法則を使って面白い思考実験をしてみました.熱力学の考え方が身につくいい実験だと個人的には思っています.

 

目次

 

ラウールの法則とは

ラウールの法則は,以下の式で表せる法則で,希薄な溶液について成り立ちます.蒸気圧降下や沸点上昇に関係しています.詳しく知りたい方は分かりやすいサイトを見つけたのでリンクを参照してください!

rikeilabo.com

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全圧は「物質のモル分率」×「その物質の飽和蒸気圧」の和

 

思考実験の状況設定

この法則を用いると面白い思考実験ができます.たとえば,物質Aが水で,物質Bが塩化ナトリウムの時,塩化ナトリウムは揮発しないのでPBは0となります.

以下のように,断熱箱(単に箱と考えていいです)の中にNaCl水溶液と純水があった時,蒸気圧には図のような大小関係がありますよね.このような状況では何が起きるでしょうか.

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思考実験模式図 ラウールの法則より,図のような大小関係が得られる

 

この問題を考えるにあたって~熱力学の考え方~

熱力学では「平衡」という考え方をよく使います.「無限時間たって変化が全くなくなった時の状態」のことを「平衡状態」といいます.熱力学で問題を解くときは必ずこの前提が入っています.化学は熱力学を根底に置いた問題が多く,特に物質の状態を扱うときは必ず前提として「無限時間たって変化がなくなった」ことを仮定します.

 

思考実験で起きる現象

では,この思考実験では何が起きるでしょうか.NaCl水溶液の水面を見てみましょう.

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NaCl水溶液の表面は図のような状態になっている

水蒸気は、純水からの蒸気なので水の飽和蒸気圧となり、PAです.NaCl水溶液の水の蒸気圧は先ほど計算で示した値になっています.これは「平衡状態」でしょうか.答えはノーです.

今,飽和水蒸気圧PAの方が大きいということは,NaCl水溶液に入っていこうとする圧力の方が高いということになります.「平衡状態」になるには,この両者の圧力差がなくならなければいけません.

従って,水蒸気がNaCl水溶液に溶け込んでいきます.水蒸気が溶け込むと式中のnAが大きくなり,係数が1に近づきます.係数が1になるとPA=PAとなり,平衡状態に至ります.

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水の量が多くなると係数は1に近づく

ところが,どんなに薄まろうが,濃度が0になるわけではないので,平衡状態に至った時,どうなっているかというと,下の図のように水がすべてNaCl水溶液に移動した状態になります.設定の時点でビーカーに水が多すぎたので床にこぼれています笑.左のビーカーは満杯だと思ってください.僕の技術不足で満杯の図を描けなかった

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平衡状態の図 左は満杯だと思ってください...満杯になったので箱にこぼれています

 

実際に実験してみた

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左:ビンに食塩           右:箱に保存

写真のようなビンに食塩を溶かして箱に保存するという実験を行いました.

下の写真が1日たった時の写真です.左が純水で右が食塩水です.1日たっても変化がないように見えたのでやり方を変えました.

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びんを箱にいれて1日後 変化なし???
(左のビンが純水,右のビンが食塩水)

 

やり方を変えて下の写真のように,ガラス板に水滴をたらして箱の中で放置しました.

1日放置したところ純水の水滴がなくなりました!NaClの水滴は心なしか大きくなったように感じます笑.

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ガラスに水滴を垂らした実験.青く見える板状のものがガラス.一日後に純水が蒸発してなくなったが,NaClだけは変わらず残っていた

 

まとめ

ラウールの法則(もしかしたらヘスの法則もかも)から考えられる状況を思考実験してみました.さらにそれを実験で確かめてみました.少し強引な実験ですが,まあ予想通りの結果が得られました.

 びんでの実験が失敗したのは,ビンの口が狭かったことと,水の量があまりにも多かったからです.物質量が大きくなると平衡状態に至るまでに時間がものすごくかかります.そのような理由から,理論と実際の実験結果が異なることもあります.化学や熱力学は無限時間後の平衡の過程を置いてることが多いので,必ずしも現象が理論通りにならないというのも覚えておくといいかもしれないです.理論の限界を知る事でその力強さが逆に際立つこともありますので.

 

浅学なもので間違いなどあるかと思います.ぜひコメントでご指摘などお願いいたします.